当事者・家族の手記


「自立に向けて〜一人暮らしに挑戦」

                        ケンPー

8年前に脳出血を起こし、命は助かったものの見えない障害と言われる高次脳機能障害という後遺症が残りました。
倒れて一週間意識不明の状態でした。意識が戻ったものの一日に何十回と同じ事を聞いたり、また部屋の中にあるトイレの場所もわからず何回も聞いていたそうです。2ヵ月後にリハビリ病院へ移りました。言語のリハビリでは、最初の頃は文字や絵を見てもわかりませんでした。でも体は覚えているので手のひらに何度も字を書いて言葉を引き出していました。そういう状態だったので、短い文章をやっと読めても記憶が出来ないので、文章全体を理解するのが難しかったです。また、今も苦手なのが人の顔を覚えられにくいことです。
記憶の回復はなかなか難しいという事でメモをつける訓練をしました。最初の頃はメモを取る事を忘れたり、メモ帳をどこにやったのか忘れたりと、なかなか定着しませんでした。リハビリの先生の指導によりアラームを一時間ごとに鳴らして、その時間に何をしているかメモを取る事で、ようやく最近小まめに取るようになりました。そして最近は記憶が以前より少し残るようになっていると感じます。
また、自分が関わっている高次脳機能障害の家族会「ぷらむ熊本」があります。現在60家族位の会員の方がいますが、お互いに情報交換したり、支えあいながらそれぞれに頑張っておられます。私もその仲間から音楽が脳にいいという事を教えてもらいギターを習っています。指先も使い、同時にいくつかの事をしなくてはならないので良いリハビリになっていると思います。記憶が出来ない為何回も同じ事を練習するので、最初はイヤイヤでしたが、先生が根気強く楽しく教えて頂くので今では楽しみになりました。またカラオケにも行きますが、テロップが読めないので仲間が耳元で歌詞を言ってくれます。それも楽しみながらのリハビリです。
 また、一人で広島まで行く事にも挑戦しました。道順障碍もあり不安でしたが、職場の上司から「口があるんだから解らない時は人に聞けばいいよ」と背中を押され、挑戦したことで大きな自信になりました。
仕事に関しては、職場に復帰したのは1年後でした。復帰出来るとは全く思っていませんでしたが、職場に相談に行ったところ、「ここから始めましょう」と暖かい言葉を言って頂き、本当に有難かったです。そしてさっそく職場で、高次脳機能障害の勉強会を開いて頂き、自分の障碍を理解してもらい、色んな面でサポートして頂いています。
最初は1週間に4日、3時間半の仕事でした。毎日の仕事内容をメモに書いて、終わったらそのつどチェックして確認し、次の仕事に移るようにしています。また最初の頃は、頭痛が多い時には月に4,5回あり仕事を休む事が多かったのですが、その日の朝に連絡を入れても「いいですよ」と軽く言ってくれるのでとても楽だったし、気を使うことなく休みを頂き、仕事が続けられたと感謝しています。4年前からは勤務時間が増え5時間半になりました。
職場復帰から8年後、仕事や色んな事に挑戦した事により、自信が付き目標であった一人暮らしをしてみようと思うようになりました。
今年の2月から職場近くのアパートで一人暮らしを始めました。料理・家事全般と慣れない事ばかりでしたが、日を重ねるにつれ自然と生活に必要な物等を考えるようになりました。困った事と言えば、アパートに自治会があり、役をするのが難しいので、自治会長さんに自分の障碍を伝え、役を免除してもらいました。また自治会長さんのほうから「地区の民生委員さんにも連絡をしたよ」と言って頂きました。周りの方に高次脳機能障害を理解して頂く事で、安心して生活が出来ると思います。
 今までは通勤に一時間かかっていましたが、職場が近くなったことで、仕事の時間が増え、現在は週4日、7時間の勤務になりました。
 病気になって出来なくなった事が沢山ありますが、いろんな人との出会いと、支えがあってここまでこれたと感謝しています。
この感謝の気持ちを忘れずに、時間はかかると思いますがあきらめずに前向きにこの障害と付き合って行きたいと思います。